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2006年3月17日 (金)

サイレント爆弾その2

 友人のI君の話。

彼は以前、町田でアパートを借りて一人暮らしをしていた。

そのアパートは、いささか古い2階建てモルタル造りのアパートで、多少駅から遠いが、2DKと言う広さと、5万円と言う割りと安い家賃に、彼は満足していた。

ある日曜日の朝、彼は夜勤明けでボロボロになって帰って来た。

2階にある彼のの部屋まで、身体を引きずるようにして階段を昇り、部屋に入ると倒れるように布団に潜り込んだ。

彼の部屋の下の階には、老夫婦が住んでおり、小さな庭に一匹の犬を飼っていた。

ちょうど彼がウトウトとまどろみ始めた時、犬が鼻を鳴らし、甘えた声で吠え始めた。

朝の静寂が破られる。

「おい、ペロを黙らせんか!」

おじいさんが、大きな声で怒鳴る。

おばあさんが庭まで出て行ったようだ。

犬に話しかける。

「良い?いくら鳴いてもしょうがないんだからね。おじいさんが散歩に出ない時は、お前も散歩に出られないんだからね、しょうがないんだからね。・・・」

どうやら犬は、散歩に連れて行って欲しくて鳴いているようである。

-いつものコトだ-

そう思いながら彼は、まどろみの中で仰向けに天井を眺めながら聞いていたが、その日は、ひどく疲れていた所為もあったのだろう、それが殊更長く感じられた。

おばあさんの犬への説教は、まだ続いている。

「ほらあ、お前も聞き分けの無いことを言わないで、静かにしなさい!」

その声が少し、大きくなったようだ。

-今日、夕方から渋谷まで行かなくちゃならないんだよなぁ-

彼の意識も、はっきりして来た。

鳴き続ける犬に、おばあさんの説教は尚も続く。

「だからあ、今日は、駄目なの!散歩には行けないの!」

-参ったなあ、4時に待ち合わせなんだよなあ、静かにくれないかなあ-

寝付けないもどかしさに、彼も段々腹が立って来た。

「静かにしなさいって!言ってるでしょお?!何で言うこと聞かないの!」

おばあさんが犬を叱りつけた。

「早く、黙らせんか!!」

おじいさんが急かすようにまた、怒鳴る、

ついに、彼は耐えかねて、

「うるせー!!」

どお~ん!!

拳で大きく床を叩いた。

次の瞬間、犬が「きゃん」

とも吠えなくなり、下の部屋では「コトりっ」とも物音がしなくなった。

その息苦しさに、彼はますます眠れなくなった。

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